■教室の概要
背景・成り立ち:
小林市の外国人住民は10年前と比較すると増加傾向です。また、在留資格別にみると、技能実習生の割合が最も多いものの、永住者や日本人の配偶者等など様々な在留資格を持つ外国人も在住しています。外国人市民向けアンケートを実施した際、「言葉が分からず困っている」という声が多く聞かれたことから、最初は「にほんごサロン」という教室を開いていましたが、様々な学習者のニーズに応えていくことが難しかったことと、運営側に日本語教育の専門家が不在で安定した地域の日本語教室にすることが難しかったことから、令和元年度から文化庁の地域日本語教育スタートアッププログラム事業を活用して、日本語教室を開設するという事業を4年かけて丁寧に進めてきました。
活動日・活動場所:
活動の実施方法は2パターンあります。中心市街地では、交流スペースを活用して月2回、2時間の活動をしています。また小林市は外国人の方が散在して暮らしていることから、アウトリーチプログラムといって、教師やサポーターが各地域に出向く形の教室にも取り組んでいます。
教室のコンセプト・特徴:
そこに集う人たちとの「KIZUNAが生まれる」ような場所になって欲しいと思っています。また、その中で、自分の伝えたい考えや気持ちが日本語で伝えられるようお手伝いすることや、必要な情報へアクセスできるようサポートすることをコンセプトに活動を行っています。
そのために「地域日本語教室KIZUNA」では、3名の日本語教師と一緒に活動してくれる市民が14名いらっしゃいます。この方たちは「地域日本語教育サポーター」として一緒に教室を運営しています。
また、「地域日本語教室KIZUNA」は地域とのつながりを大切にしています。例えば、市内高校生と一緒にイベントを企画・運営して「浴衣体験」や「年賀状作り」を行ったり、県国際交流協会の協力のもと、「地域日本語教育サポーター養成講座」を開催し、サポーターを養成しています。
■学習者の主な背景
小林市は技能実習生が約7割です。国籍はベトナム、フィリピン、インドネシアなど22か国の国の方が居住されています。ですが、日本人の配偶者や永住者の方も一定数いらっしゃいます。
■使用教材
日本語教師が学習者のニーズに合わせてハンドメイドで作ってくれています。
■活動内容
毎回、テーマを変えて教室を実施しています。例えば、防災、ごみ、まちあるき、買い物、病院、年末年始など、学習者のニーズに合わせて教室を開催しています。
市民ボランティア(サポーターと呼んでいます)が各テーブルを担当して、日本語教師と学習者の橋渡しをしてくれています。
■行事内容
イベント型でいうと、地元高校生が行った「浴衣体験」があります。地元高校の「茶道部」の生徒に声かけをして、着付けのお手伝いをするために教室参加してもらいました。また、「年賀状作り」では「書道部」に年始の言葉を書いてもらったり、年賀状に書くイラストを「美術部」にお願いしたりしたおかげで、教室活動を楽しく行うことができました。
■学習者・スタッフ(ボランティア)の実際の声の紹介
スタッフの声
・日本人の私でも知らないことを知れて、本当に勉強になりました。
・日本語教室だけど、外国の文化を知ることもできて楽しかったです。
・地元の事だけど、知らないことがあって改めて知ることができて良かったです。
学習者の声
・日本人の人と実際に話ができて楽しかった。
・知らないことを知れてうれしかった。
・浴衣を着れて、キレイになれてうれしかった。
・買い物のテーマのとき、知らない単語があったので今度使ってみようと思います。
■地域ならではの悩みなど
やはり、外国人の方が散在して生活いる中で、市内の公共交通機関が限られていますので、中心地の教室に来ることはとても難しいと感じています。オンラインで教室をと検討したこともありますが、やはり教室のコンセプトでもある「顔の見える関係性」を作っていくという面からも、できるだけ対面で教室を行いたいので、地域で教室を運営していくことの難しさを実感しています。
■今後の課題
大きな展望:
小林市が目指す将来のあるべき姿は、「民族の違いを超えたすべての市民にとって誰もが安心して、快適に過ごせる小林市」です。これを達成するためには、外国人の方の努力だけでなく、全市民が一丸となって取り組むことが不可欠だと思っています。
今後の教室運営に関して、交通機関の限られる散在地区の外国人市民も教室へ参加できるよう、中心地で教室を開催することはもちろん、教室が地域へ出向いていくアウトリーチ型教室を継続して行っていくことも重要です。
こういった教室を、本市で生活する外国人市民に必要な日本語習得を支援するとともに、日本人市民が外国人市民の方を地域社会の一員として受け入れる基盤づくりにつながることを目的に展開していきたいです。基盤が構築されていくことで、小林市に住むまたは住もうとしている人に住んでみたいと思えるような選ばれる小林市になればと思っています。
そのためにも、地域日本語教育コーディネーターとサポーターと一緒に地域日本語教室の活動を行っていきたいです。
こういった展望を実現するための課題:
(1)安定した地域日本語教室の実施
*参加者の確保が課題となることが予想されることから、本市に多く在住する技能実習生や特定技能の外国人の参加を促すため、開催場所と開催時間などの調整を検討する必要があります。
*また、教室の内容もサポーターが主体の活動と日本語教師が主体の教室活動の連動が必要不可欠と考えています。
(2)年間の教室内容の明確化
参加者が年間を通じて教室の内容を理解するためのシラバスや教材を募集の段階から示していく必要があると思います。
(3)サポーターの育成
現サポーターのスキルアップと新規開拓のための講座を毎年開催していく予定です。
(4)地域日本語教室の周知活動
*学習者確保のために、様々な媒体(SNS,広報、メディア)を通じて教室活動を紹介していくことは今後の教室運営にとって大事なカギになってくると思っています。
*学習者を取り巻く関係者・機関との連携を図るためにも、教室活動の説明を丁寧に行っていきたいと思っています。