【教室の運営】企業出資に基づいた日本語教室ー企業のリクエストを聞くー

企業と連携して日本語教室を運営するにはどうすればいいのでしょうか。文化庁の補助事業である福岡県・日本語教育環境整備事業(以下、福岡県事業)は、日本語教室の安定的かつ持続的な運営のために、企業との連携を含めた運営体制をつくることをテーマとしています。現在、直方市、古賀市、苅田町が取り組んでいます。その中で、直方市は2020年度から取り組み始め、2022年10月に企業出資による日本語教室を開始します。【深江新太郎】

「どのような教室をつくりたいか」企業に聞く

福岡県直方市は、総人口56,494人、その内、在留外国人の人口が637人で、総人口に占める外国人の割合は1.1%です(2020年3月31日時点)。在留外国人の国籍別内訳では約65%がベトナムであり、在留資格別内訳では約50%が技能実習です。直方市が日本語教室に取り組むことを決めたのは、技能実習生が直方市の産業を支えている実情を知り、技能実習生の定着支援を行おうと考えたからです。

ちょうどそのとき、福岡県事業(2020年度)の募集が開始されました。福岡県事業は、「日本語教室を安定的かつ継続的に運営するため、行政等の助成金に依らず、例えば技能実習生等の外国人材を多数受け入れている事業者の費用負担等を検討すること」が一つの条件となっています。そこで直方市は、つながりのある数社に費用負担を含めて日本語教室の開設について説明を行いました。そして、賛同してくれた企業の方が集まり、どのような教室を望むか、話し合いの場が持たれました。その結果、生活に必要な日本語を学びながら3年間で日本語能力試験のN3程度のコミュニケーション能力をめざす教室、という共通認識ができました。

企業出資の教室をつくる第一歩は、企業に教室開設の趣旨を説明し、「どのような教室をつくりたいか」聞くことと言えます。先日も、他市の会議で、企業出資について参加した企業に話を聞いたところ「お金を出すからには教室の内容に関わりたい」という声がありました。これは当然のことだろうと思います。行政が企業と話し合いの場を持ち、企業が必要だと思っている教室について話を聞くためにコーディネーターがその場を取り持つことで、話し合いはよりスムーズに進むでしょう。

執筆 / 深江新太郎

「在住外国人が自分らしく暮らせるような小さな支援を行う」をミッションとしたNPO多文化共生プロジェクト代表。福岡県と福岡市が取り組む地域日本語教育体制整備事業(文化庁補助事業)のアドバイザー、コーディネータ―。文化庁委嘱・地域日本語教育アドバイザーなど。著書に『生活者としての外国人向け 私らしく暮らすための日本語ワークブック』(アルク)がある。

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