■きりしまにほんごきょうしつについて
「きりしまにほんごきょうしつ」は鹿児島県霧島市で活動している任意団体です。日本語サポーター養成講座を受講した仲間と設立し、現役の日本語教師や日本語教師を目指しているスタッフ、日本語サポーターで構成されています。現在、「カンバセーションナイト」と「企業×日本語教師×外国籍従業員×日本語サポーターによる日本語教室」の二つの活動を行っています。以下、それぞれご紹介します。
■カンバセーションナイト
◎活動内容
月1回、国分公民館で午後6時から午後8時まで、「カンバセーションナイト」を開催しています。開催日は毎月変動します。予約不要で、途中参加や途中退席も可能です。
参加費は大人200円、学生(小学校~大学生)100円、未就学児無料です。
開催日前に公式LINEやFacebook等で配信しています。また、チラシを市役所や公民館等に配架しています。
ここでは、在住外国人と日本語サポーター、そして地域住民が「日本語でおしゃべりをする」ことを原則として交流を図っています。
日本語をもっと話したい、日本人の友達がほしいという在住外国人の思いと、もっと彼らと気軽に交流を持ちたい、何かできることをやってみたいという地域住民が一緒に集まれる場を提供しています。
おしゃべりのテーマなどは特に決まっていません。自己紹介から始まって、地域の見どころやお店の情報、それぞれの好きな食べ物や母国の食べ物など、様々なことを話しています。各テーブルで日本語サポーターがファシリテーターとして話を振ったり、まとめたりしていますので、初めて来た方でも誰も話す方がいない、一人で困るということにはなりませんのでご安心ください。
小さな子供さんを連れて家族で参加されたり、雇用する外国籍従業員を連れて来てくださったり、友人同士で来たりと参加するきっかけは様々ですが、お互いに興味・関心を持ちながら、温かい雰囲気でおしゃべりをする居場所として運営しています。
◎学習者の主な背景
・霧島市や近郊地域で働く外国籍従業員(技能実習生や特定技能の方が多い)
・海外にルーツを持つご家庭
・ALTや国際交流員
◎使用教材
「カンバセーションナイト」は学習としての場ではないので、教材は使用していません
◎行事内容
月1回の通常回の開催、年2回、夏祭りと忘年会イベントを計画し、夏祭りでは射的・輪投げ・型抜き・浴衣の着付け体験、忘年会では書道体験、おみくじ、すごろくやカルタ遊びなどをブースに分け、子どもから大人まで遊べるようにしています。
◎学習者・スタッフ(ボランティア)の実際の声の紹介
【スタッフの声】
・カンバセーションナイトが始まり、1年半ぐらいが経過しました。その間に、外国人の参加も、欧米人から東南アジア、アフリカ、中南米の人と参加者の国が広がるだけではなく、学生の参加、シニア層の参加と参加者の層の広がりもあると感じています。更に、外国人同士が、手伝いながら、料理教室を開催したり、日本人と外国人という関係だけではなく、外交人同士の関係の広がりを感じます。そして、このような活動が霧島だけでなく、周辺地域への広がることや、地域活動への参加に、広がっていくことを、期待しています。(70代・男性)
・ボランティア団体「きりしまにほんごきょうしつ」が、団体として初めて開催した活動が、カンバセーションナイトであり、2022年10月以来、今日まで、月一回開催を行っています。霧島市及び近隣在住の外国人の方と、外国人とのコミュニケーションに興味を持つ日本人に、やさしい日本語で話す場を提供するという方針で、一年間活動してきて、我々への認知度の高まりと共に、外国人、日本人の方々のネットワークが、少しずつ拡大してきたことを実感しています。一方、最近は参加者が少ない月もあり、話題の内容について検討していく必要があると感じています。我々の活動の原点であり、今後も内容を充実させながら、長く継続させていきたいと思っています。(60代・男性)
・私は「きりしまにほんごきょうしつ」のスタッフの一人として「カンバセーションナイト」に参加しています。霧島市には在住外国人(留学生・技能実習生・特定技能実習生)が約1,000人いると言われていますが、言葉・文化・習慣の異なる日本で何に困り生活しているのか?これまで全く興味もなく、想像することもありませんでした。しかし、カンバセーションナイトに参加していた在住外国人の方々との会話を通し、文化や習慣の違いをお互いに理解しながら、コミュニケーションを図ることで新たな発見があり、とても良い経験をさせて頂いております。また、回を重ねるごとにリピーターの在住外国人もでき、積極的に会話・ゲームに参加して頂き、とても楽しい時間を共有することが出来ています。在住外国人と地域住民の交流の場としてカンバセーションナイトがあります。多文化を知る良い機会でもありますので、多くの方に参加して頂きたいと考えております。(60代・男性)
【学習者の声】
・日本人はとても親切でフレンドリーで気配りがあり、コミュニケーションが取りやすく、外国の文化を理解しようとすることに幸せを感じます。日本は豊かで多彩な文化を持ち、安全で活気のある国だと感じています。(20代・男性・中国)
・2022年6月に京都から霧島に引っ越してきました。10月から霧島にいろんなマルシェやお祭りなどで出店をさせていただき、本場の中華まんを販売しています。
実は引っ越してきたとき、外国人が少ないからなのか、霧島に日本語教室がないと思っていました。そんな時、中国人の友人にきりしまにほんごきょうしつを紹介してもらいました。毎月のカンバセーションに参加しています。
ここの先生たちはボランティアして、優しくて、興味がある話題なら何でも話せます。ここで後藤先生、本田先生、尾崎先生に出会うことができて嬉しいです。いろいろと助けてくださって、心から感謝しています。
皆さんは何をする為に日本へ来ましたか?日本へ来る理由より、日本語が一番重要なので、ここで日本語を話してください!毎日、悩んでいることもあるし、世界中に沢山の問題があるし、みんな何か変えたい現実を持っていました。ここに、何でもいつでもどこでも、沢山の相談に来てください!外国人は外国で暮らしている時、本当に大変ですね。自分の中に何を考えがあって、自分の以外の方が全然知らないから。だから、ここに来てください。ここに話してください。
皆様は人生で頑張って生きている。これから、皆様は1人1人と一緒に日本語で自分の人生を探し始めましょう!(40代・女性・中国)
■企業×日本語教師×外国籍従業員×日本語サポーターによる日本語教室
◎活動内容
企業からのご依頼を受けて運営する日本語教室です。コースデザインやカリキュラムの作成、授業の運営は日本語教師が有償で行います。
特徴として、日本語サポーターが日本語教室に参加し、学習者の会話練習やワークのパートナーになっています。
日本語教師と学習者の縦の関係に、日本語サポーターと学習者の横の関係が加わり、教室内の活動が活発化します。また、様々なレベルの学習者がいますので、遅れている学習者へのフォローを日本語教師が行い、その間に会話練習を日本語サポーターと行うなど臨機応変に対応しています。
基本的に日本語サポーターは無償での活動です。事前準備などは日本語教師が行うことや、その場の指示でワークを行うことなどで、日本語サポーターの負担が少なくなるように仕組み作りをしています。
◎学習者の主な背景
企業で雇用されている外国籍従業員(特定技能実習生・技能実習生)
◎使用教材
企業での日本語教室 企業の職種に合わせた教材「ゲンバの日本語」・絵カードなど
◎学習者・スタッフ(ボランティア)の実際の声の紹介
【スタッフの声】
・2023年4月から月2回で始まった企業での日本語教室。初日は内心、ドキドキでした。日本語サポーターとしてテーブルに着きましたが、相手はベトナムの若い技能実習生が二人。正直、自分の話し方は笑顔こそ出してはいたけれど、マスク着用ということもあり、きっと聞きにくい、わからない日本語だらけだっただろうなあと、反省が多かったです。でもそれ以上の「充実感がいっぱい!」でした。毎回、次が楽しみでした。本田先生の授業を{自分も技能実習生と一緒に学んでいる}という感覚です。彼らは若いので吸収が早く、回を重ねるごとに話せるようになっていきました。わからないときはそんな仕草を出すようになり、私もそれをキャッチできるようになった感じがありました。私もだんだんと言い方を丁寧にはっきり口に出すことを心掛けました。本田先生が学習計画をしっかりと作られているので、自分が都合が悪く欠席することがあっても、次、また無理なく安心して授業に関わることができました。それはとても良いシステムだと思いました。(60代・女性)
・初回は霧島市役所の方々がお話しされる「ごみの分別について」を、絵カードを使ったゲーム形式で、「やさしい日本語」で学ぶものでした。ベトナムやミャンマーの技能実習生の方々の一所懸命に学ばれる姿に感銘を受け、月に二回のサポートを続け早半年が過ぎました。ベトナムやミャンマーからの受講生の方々とも顔見知りになれ、皆さんが読み書きも含め半年で随分日本語が上手になられたことをとても嬉しく思います。毎回、本田先生が生活や仕事に密着した話題から授業を展開されていること、複数名のサポーターが関わることによって可能となる少人数でのグループワークが功を奏していると考えます。また、初回に挨拶に来られた社長さん、毎回授業を見守られ、受講生の日本語力向上を我が事のように慶んでおられる総務担当の方々に、技能実習生を受け入れる会社としての覚悟と素晴らしさを感じています。こちらの企業様の卓越した取り組みが、霧島市、鹿児島県のみならず、若年層減少の人口問題を抱え労働力確保が国の存亡にかかわる日本での好事例とならんことを期待しています。(60代・男性)
・弊社は、従業員の約半数の外国籍従業員を雇用しております。中には、日本語が全く話せない状態で来日する者もおり、業務教育はもちろんのこと、安全面での指導・連絡を理解できているか、社外での有事の際に情報弱者にならないか等、大きな不安要素が長年ありました。霧島市国際交流協会の講座で日本語サポーターとしてご協力くださった、きりしまにほんごきょうしつに社内で定期的に日本語を学べる場を作るために日本語教室をご依頼しました。受講者が多く、講座形式だとどうしても後ろに下がってしまう者が出てしまうため、日本語サポーターの皆さまのご協力と、従業員を楽しく導いてくださることにつきまして、とてもありがたく、毎々心から感謝しています。職場ではプライベートな話をする機会が少ないので、先生やサポーターの皆さまが色々聞いてくださるのが嬉しいようです。
日本語教室を重ねるごとに、笑顔が多くなり、自信がついてきているようで、今までは、日本語が堪能な同国籍の従業員と一緒に事務所に来ていた者も、ひとりで来て、がんばって伝えようとする場面が増えました。学ぶ意欲が出てきて、「家でも日本語を勉強しています!」「夜間にオンラインで学べる教室があったら嬉しい」と伝えてくれる従業員も出てきました。(企業側日本語教室担当者)
【学習者の声】
・いいと思います。先生たちと話すの楽しいです。(ベトナム人技能実習生)
・とても役立つと思います。N4を受けます。漢字難しいです。(ベトナム人技能実習生)
・とても楽しい。日本語少し話せるようになりました。(ベトナム人技能実習生)
■地域ならではの悩みなど
霧島市は山間部・都市部・海沿いと幅広いため、在住外国人が散在しています。また、公共交通機関が減便を続けているため、移動が容易ではありません。都市部でカンバセーションナイトを開催すると、自転車でアクセスできる範囲の在住外国人は参加できますが、車の移動手段を持たない場合、参加が難しくなります。
霧島市は地域日本語教室の空白地域でもあり、まだまだ在住外国人に対する施策や認識が不足しているところがあります。公的に広く支援、活動が可能になるまで、当団体のような活動で交流やニーズを把握しながら、地域の方々にも理解を広げていく必要があると考えています。
■今後の課題
活動を一部地域だけにせず、山間部や海沿いまで広げること。また、オンラインやハイブリッドでの対応ができるように、公的施設のwi-fi環境を活かすなどして検討したいと考えています。
地域での理解が進むように、自治会や学校での啓発活動や交流の場を設けたり、自治会や企業でのカンバセーションナイトの開催などを通してより密な交流と困りごとの把握に努められるようにしたいです。
最後に、霧島市の多文化共生の施策に、在住外国人のライフサイクルに合わせた支援と、サポートする地域住民への多様な講座や研修の機会を実施できるように企画し、提案していくことを大きな展望として考えています。